身近になる国際バカロレア(IB)
当ウェブサイト内SAT講座のURLで、「日本国は一部日本語による国際バカロレア(IB, International Baccalaureate)の教育プログラムの開発・導入等を通じ、国際バカロレア認定校等の大幅な増加を目指す(2018年までに200校)」という閣議決定がされています。日本の国際化とともにますます活用されていくことが予想される将来的に注目の卒業資格/ディプロマなので興味がある方は文部科学省の該当記事などご参照ください)、と記載していたところ問合せがありましたので、国際バカロレアとは、について少し補足いたします。
教育の国際化に本腰な政府
文科省の資料によると、上記のとおり国内における国際バカロレア認定校等(ディプロマプログラム, DP)を2018年までに200校に増やすことに加え、平成25年度からディプロマプログラムの科目の一部(経済(Economics)、歴史(History)、生物(Biology)、化学(Chemistry)、物理(Physics)、数学(Mathematics)、課題論文(EE, extended essay)、知の理論(TOK, theory of knowledge)、創造性・活動・奉仕(CAS, creativity, action, service)を日本語でできる「日本語DP(Diploma Programme, ディプロマ・プログラム)」の導入を推進し、早ければ平成27年度から日本語DP課程が実施される見込みだそうです。日本再興戦略-JAPAN is BACK-という格好いい国の総合戦略の一環です。
世界の大学に挑戦したい日本の大学
日本の大学は日本の少子化傾向もありますし、外国からの留学生を積極的に誘致したいところだと思います。また研究力、学生の質の面でも各国の大学と競合したいところであり、そのような背景で東京大学では入学時期を国際的な時期にあわせて秋入学とする計画を持っています(実施は延長されているようですけれど)。東大では推薦入試で国際バカロレアのディプロマのスコアをアピール材料にすることができます。一方、関西の雄京都大学では平成27年度入学について法学部で10名の外国学校出身者学生募集をしており、国際バカロレアやアビトゥアのディプロマを持つ外国人留学生の誘致をしています。但し、入学後の授業は日本語で行うとしており、この点で英語のみで法学修士の学位を取得できる体制を整えている下記の九州大学に一歩譲るのではないでしょうか。国際法学については福岡の九州大学に軍配があがるように思います。地元びいきかもしれませんが、九大頑張れ!
九州大学の挑戦
福岡の話題で言えば、九州大学(福岡県福岡市西区元岡)が2017年秋をめどに国際教養学部(仮称)の新設計画を公表しており、国際バカロレアのディプロマを取得すれば(かつ18歳を超えていれば)日本の高校生卒業と同等の扱いとなりますので、国際バカロレアのディプロマで海外の大学だけでなくこれらの日本の大学に入学するというような道も開けるように思います。九州大学ではAO試験で法学部に入学し英米法などを修める大学院(LL.M.)に進学して国際的な法律のエキスパートになるコースもあります。法律家といえば法科大学院を経て司法試験の合格という険しい道だけを想像しがちですが、特に英語の法律に詳しいロイヤーに対する需要はこれら弁護士などの法律家以外に実業の中で結構あります。例えば法律関連文書の翻訳などは日英訳、英日訳ともにかなり実需があります。
日本語DP過程で親しみやすくなるIBディプロマ
また、国際バカロレアのDP,ディプロマを取得するには6つのグループから科目を履修し、うち3つはハイレベルの過程をパスする必要があるので、多くの日本人学生にとっては、例えば日本語と数学をハイレベルで履修してなんとかなるとして、もうひとつのハイレベルの科目はどうするかという問題が残り、DP過程が英語、フランス語、スペイン語などでのインストラクションに限定されていると日本人の学生にはなかなか必要な単位を良好な評価点で取得しにくいということがネックになりがちだと考えられます。(IBは6科目各7点とEE,TOK,CASを加えて合計満点45点です。アイビーリーグなどの名門大学では38点程度、ケンブリッジやオックスフォードでは40点程度が求められるらしいので、東大、京大、九大など日本の名門大学もその近辺になるだろうととりあえず仮定しておきましょう)
上記のように日本語DP課程が実施されれば、いくつかの科目を日本語で取得することが可能になり、必要単位の取得と好成績が促進されて国際バカロレア取得の間口が非常に広がるのではないかと予想されます。例えば、Theory of Knowledgeの科目では、ある英文のテキスト(published by Pearson Baccalaureate, written by Sue Bastian, Julian Kitching, Ric Sins)を見るかぎり、学習内容の概念は別として、バイリンガルの環境で育ったこどもを除けば、中学まで日本語で教育を受け英語を第2外国語として学んだきた日本人の多くの学生には使用されている言語のハードルが高すぎてよく理解することは少し無理ではないかと思われます。日本語のDP過程が実施され、この科目を日本語で試験を受けて単位を取得し、成績が評点されるようになれば国際バカロレアディプロマに挑戦する日本人学生の負担は確かにずいぶん減るだろうと思います。
国際バカロレアディプロマを授与できる認定高校の増加に対する期待
日本語DP過程が導入され、日本国内で単位認定できる日本人教師の導入が進めば、具体的に国際バカロレア認定校が公立の高校も含め広まる可能性があります。福岡では現在(平成26年11月時点)国際バカロレア認定校は私立の福岡国際学園(Fukuoka International School)と都築育英学園(リンデンホール高等部)の2校だけのようですが福岡県内で今後国際バカロレアディプロマ授与校の申請と認可がほかの高校に広がることが予想されます。
英語B科目の英語での履修
国際バカロレアのいくつかの科目が日本語で履修ができるようになったとしても、第2外国語(多くの日本人学生にとってはすなわち英語)科目である英語Bについては英語での履修になりますので、国際バカロレアのディプロマの妙味は今後も英語力であることに変わりはありません。
国際バカロレアの理想
The IB mission statement
The International Baccalaureate aims to develop inquiring, knowledgeable and caring young people who help to create a better and more peaceful world through intercultural understanding and respect.
To this end the organization works with schools, government and international organizations to develop challenging programmes of international education and rigorous assessment.
These programmes encourage students across the world to become active, compassionate and lifelong learners who understand that other people, with their differences, can also be right.
※本ウェブサイトの記事は国際バカロレア機構その他国際バカロレアの主体となる団体や、文科省、言及される各大学、高校その他の機関による検討を受けたものではありません。本記事の筆者独自の意見です。
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筆責:永江俊一